目次
はじめに
みなさんは、こどものころ、
ほめられて育てられた記憶と怒られた記憶どちらのほうが多いでしょうか?
近年、「ほめる教育」というのが話題になっています。
今回はその「ほめて伸ばす」という教育について、見ていきたいと思います。
最初に断っておきますが、もちろんこれは「ほめてはいけない」ということではありません。
人間はほめられることに喜びを感じ、それは自然とやる気にもつながってきます。
また、幼児期のお子さんには、ひとつひとつの行動に関して
気にかけて、ほめてあげることがたいへん重要です。
しかし、これからみなさまがお子さんを育てていくうえで。
「ほめてるだけ」というのはよくありません。
もちろん、「むりに怒らなければならない」と言っているわけではありません。
今回は、なぜ「ほめるだけの教育」がよくないのかということを
ご説明していきたいと思います。
「ほめる教育」は、いつから日本に導入された?
「ほめて育てる」という教育はもともと欧米で生まれたものです。
そして、その『ほめて育てる』思想は1990年代、日本に取り入れられました。
その大きな理由のひとつとして、教育界にも親の間にも
『ほめて育てることで若者の自己肯定感を高めることが必要だ』
という声が高まったことが挙げられます。
「自己肯定感」ってなに?
自己肯定感とは、自分の良いところだけでなく、悪いところも含めて、自分自身を
肯定する感覚のことです。
これが近年よく話題になる理由としては、仕事や人間関係など、
人生の様々な面で自己肯定感が影響を及ぼすということがわかってきたためです。
たしかに、自己肯定感が低すぎると、幸せになりにくいです。
というのは、必要以上に落ち込んだり、「私はなんてダメな人間なんだ」と自分を責めたり、
または逆に人に認められたいという気持ちから、他人を必要以上にコントロールすることが
あるからです。
「ほめて育てる」教育によって、子どもや若者の自己肯定感は高まったの?
では、本当に「ほめて育てる」の輸入から20年ほど経ったいま、
子どもや若者の自己肯定感は高まったのでしょうか?
「2011年に行われた『高校生の生活意識と留学に関する調査―日本・アメリカ・中国・韓国の比較』(日本青少年研究所)は、自己肯定感に関連する項目があります。
1980年および2002年で同じ調査をして、比較してみました。
すると、
『自分はダメな人間だ』について、『よくあてはまる』と答えた高校生の比率は、
1980年に12・9%
↓
2002年に30・4%
→2・5倍に跳ね上がっています。
2011年には36・0%と1980年のほぼ3倍にまで増加していることまでわかります。
2014年には、25.5%と少しばかり改善していますが、
それでも「ほめて育てる」教育が導入される前にくらべて、
10%以上も上がっています。
ここから、「ほめて育てる」教育は、自己肯定感を上げるばかりか、
反対に下げてしまっていることがわかります。
いまの子どもや若い人は現状を克服しようとする意識が低い?
「同じ調査で、『現状をそのまま受け入れる方がいい』という項目もあります。
これを肯定する(『よくあてはまる』+『まああてはまる』)高校生の比率は、
1980年に24・7%
↓
2002年に42・1%
→2倍近くに上昇
さらに2011年には56・7%と大幅に増加しています。
1980年には4分の1だったのに、30年で半数を大きく超えたことになります。
これは自己肯定感そのものについての項目ではないが、
現状を克服しようという意欲が年々低下していることを示しており、
自己肯定感の低下を示すものと考えることができます。
なぜここまで『ほめて育てる』という教育は支持されてきたのか?
親のほとんどは、こどもに嫌われたくないという気持ちがどこかにあります。
つまり、憎まれ役を買ってでも、子どもを鍛えて社会に送り出すといった使命感を
もった親が少ないのです。
そして、子どもに嫌われたくないと考える親にとっては、
『ほめて育てる』という思想はとても都合のよいものだったのです。
「ほめて育てる」というのは親の自己愛を満たすための方法になり得る?
じつは『ほめて育てる』というのは、子どものためというより、
親自身の自己愛を満たすためと言えます。
お子さんはペットではなくしっかりとした人間です。
そのため、ほめるだけではよくありません。
しっかりと叱るべきできは叱ることが必要です。
子どもを一人前に育て上げて社会に送り出すのが親の使命
ここまで「ほめて育てる」という教育について
批判的にご説明してきました。
しかし、もう一度断っておきますが、
けっしてほめることがいけないというわけではありません。
なにかがんばったときや、結果を残した時は
しっかりほめてあげることが大切です。
そのときに、「ただ、◯◯ちゃん、すごいね!」ではなく、
「◯◯ちゃん、△△もできるんだ!すごいね!」
というように「なにが」すごいのかもしっかり伝えてあげるようにしましょう。
そして、なにかいけないことをしてしまったとき、
礼儀やしつけが甘かった時は、しっかり叱ることも大切です。
いくら能力が高くても、人としての最低限の作法・マナーは必要になってきます。
そして、一人前のこどもに育てるのが親の役割なのです。
こどもを一人前にするために、「ほめる」という教育を有効につかってください!
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